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最期の選択を共に考える:つなぐ役割の本質【看取りの報告書・BWさまのこと】

かわべクリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。これまでお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出とともにご紹介したいと思います。

ありのままを受け入れることの難しさ

病院への看取りの報告書

いつもお世話になっております。
ご紹介いただきましたBWさまについてご報告させていただきます。
退院時、「最期は病院に戻ることを希望されている」とお聞きしておりましたが、初回訪問の際、どこまでご自宅でお過ごしいただけるかを慎重に見極めることが必要と考えました。
予後が2週間程度と判断されたため、初回にもかかわらずご家族と今後の過ごし方について確認させていただきました。その際、ご本人の意向が実は「最期まで自宅で過ごしたい」と明確であることが分かり、クリニック、訪問看護師、ケアマネジャーが一体となり、ご家族を支えていくことをお伝えしたところ、大きな安心感を得ていただけたように感じました。
退院当日から翌日にかけて、BWさまは自宅に戻られた喜びとステロイドの効果もあって、お風呂やトイレを自力で使用されるなど、私たちを驚かせてくれる場面もありました。その笑顔や活力を拝見していると、ご本人がどれほどご自宅での生活を望んでいたかを改めて感じる瞬間でした。
しかし、その喜びも束の間、数日後からは再び身体機能の低下と睡眠時間の延長が見られました。それでも、旦那さまやお姉さまが見守る中、介護の負担が増すことなく、穏やかで温かな時間を過ごしていただけたのではないかと思います。
最期の日も、旦那様が作られたお粥を数口召し上がり、夕方ご家族に見守られながら安らかに永眠されました。
旦那さまは「何でも許してくれる優しい妻でした。そんな彼女らしい穏やかな旅立ちだったと思います」と涙ながらにお話しされていました。その言葉から、ご家族の中で大切な思い出として残る最期の時間を共に見守ることができたのではないかと感じます。
この度はご紹介をいただきありがとうございました。BWさまとご家族の大切な時間に寄り添う機会をいただけたことに心より感謝申し上げます。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

傾聴と信頼

人と人をつなぐ仕事とは、コミュニケーションや協力を通じて他者を支援し、関係を築く役割を担うもの。このような仕事をする人々は、社会の中で非常に重要な存在です。
私自身も、相談された内容が自分の専門ではないものであれば、その分野の専門家にお繋ぎします。

このとき、特に注意しているのは、
相談者が何に困っているのか
何を求めているのか
これらをしっかりと聴き取ることです。

こうした丁寧な傾聴を通じて、相談者との信頼関係を築くことを心がけています。
また、自分の先入観や思い込み、さらにはブロッキング(相手の話を遮ること)を避けるよう意識し、相談者の話に誠意を持って耳を傾けるよう努めています。

「決めつけ」が起こる原因は聴いていないから

病院からのご紹介時に、「最期は病院に戻られると思います」と断言されるような申し送りが時折あります。この点について、少し考えてみたいと思います。
そもそも「当然、病院が一番」と考えているのは誰なのでしょうか? 厚生労働省が行った「最期はどこで過ごしたいか?」というアンケートでは6割の方が自宅を希望しているにもかかわらず、実際には7割が病院でお看取りをされている現状があります。この開きの原因は何なのでしょうか?

例えば、「このケースではなぜ最期は病院が良いと考えたのか」「本人や家族が病院を希望した理由は何か」といった点を深く掘り下げることが必要だと思います。
それは病院でしか解決できない理由だったのでしょうか?

もし「不安そうだから」という理由であれば、その不安が何なのかを確認し、説明を十分に行ったのでしょうか? こうした確認をすることなく「不安が少ない場所は病院。だから病院で最期を迎えるのがいい」と他者が決めつけることで、本人やご家族の意向を正しく汲み取れていない可能性があります。

今回のように「最期は病院に戻ることを希望されている」と言われても、丁寧に信頼関係を構築し、本人やご家族の思いを伺うと、違う気持ちが出てくることは決して少なくありません。

真実の希望が隠されてしまう可能性

BXさんの場合は「家では好きなものを食べられるし、忙しい病院では自分の思いをナースコールで伝えることも難しい。だから家で過ごしたい。」「昼は夫の作ったおにぎりが食べたい」と願い、それを実現するために家での生活を選ばれました。これほど明確な思いがあっても、適切に聴き取りを行わなければ「最期は病院が良い」とされ、何かあればすぐに病院に搬送されます。それでは、本人やご家族が望む穏やかな最期とはかけ離れた結果になってしまいます。

本人やご家族との対話を通じて、これから何が起こるのかを丁寧に説明し、共有していくことが重要です。そのプロセスを通して、ご家族もどのように見守るべきかを理解し、心の準備を進めることができます。別れは悲しいものですが、しっかりと経過を見守ることで、少しでも穏やかな心持ちでお見送りできるのではないでしょうか。

つなぐ役割をもつ私たちの心構え

旅立ちの日に、旦那さまより「今朝、僕が作ったお粥を少し食べてくれました。昼からはずっと寝ていて、そのまま穏やかに逝きました。」と、このような言葉をお聞きしました。

私は、人生の最期が必ずしも在宅であるべきだとか、病院が良くないと考えているわけではありません。その方が望む場所で、その方らしく生ききることが何よりも大切だと考えています。
そのためには、最期の重要な選択をするにあたり、正確で十分な情報提供が行われていること、そしてご本人が「どのように過ごしたいのか」をしっかりと整理し、納得したうえでの答えであるか、丁寧に汲み取りたいと思っています。

また、「つなぐ」という役割の本質を見失い、その説明に慣れ過ぎてしまうことは避けなければなりません。多くの場合、ご家族にとってはそれが初めての経験であり、戸惑いや不安を抱えていらっしゃることが多いと理解しています。だからこそ、私たちは常にそのことを心に留め、最大限の配慮と優しさをもって対応することが大切だと考えます。

【今週の東大阪プロジェクト】

東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます

下記の通り講演会を開催します(現地開催のみ)

【日本死の臨床研究会・第31回近畿支部年次大会 大阪】
(どなたでも参加可能)

参加を申し込む

皆さんは、『豊かに生ききる』ことについて考えたことがありますか?

厚生労働省は、2025年までに、団塊の世代が75歳以上になっても住み慣れた地域で自分らしく暮らせるようにするため、
住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体となった地域包括ケアシステムの構築を目指しています。

このシステムでは、縦割りの制度や「支える人」と「支えられる人」の関係を超えて、
地域の皆さんが参加し、世代や分野を超えて人と人、人と資源がつながり合う地域共生社会を目指しています。

そこで、私たち市民一人ひとりが『豊かに生ききる』ことについて一緒に考える機会を設けました。

日時:2025年2月2日(日)10時〜16時
場所:東大阪市文化創造館小ホール
定員:200名(講演・ワークショップ)
後援:東大阪市、東大阪プロジェクト

◆基調講演(10:00-12:00)
『病の語りを聴く方法〜NBM〜』
ナラティブコミュニケーション研究所所長、なかがわ中之島クリニック院長
中川 晶先生

◆ワークショップ(13:00~16:00)
『生と死を彩る言薬(ことぐすり)』
Clinical Dialogue Coaching®代表
大坂巌 先生

大会長:川邉正和(医療法人綾正会かわべクリニック)/山本直美(社会医療法人若弘会若草第一病院)
参加費:会員2,000円、非会員3,000円(参加費は直接会場でお支払いください)
*当日、入会していただきますと会員価格で参加していただけます

※こちらから画像が拡大表示されます

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