東大阪女性経営研究会・公開講演会で講演しました
今回の講演は、東大阪商工会議所を通して「人生会議」をテーマに話していただけませんかとご依頼を受けたものです。
商工会議所と言えば、加入している会員の多くが中小企業の社長さんです。東大阪商工会議所の会員数は約6000社。小さな町工場がとても多く、クリニックの患者さんにも製造業の方は多くいらっしゃいます。
普段からこのブログを読んでいただいている方は、ご理解いただいているように「自分の人生をどう過ごしたいか? 家族に何を残したいか?」ということは、あらかじめ言葉にして、伝えておかなければかないません。
中小企業の社長さんなら、ご自分や家族に加えて、従業員の皆さんやその家族、関わりのある取引先の企業さんなどのことも考えておかなくてはなりません。そのような方々が手遅れにならないように「明日から少しでも大切な人に自分の想いを伝えられる、活かせる話」をお届けしたく、お話の内容を吟味しました。
講演のテーマ「人生会議~大切な人に自分の思いを伝えませんか~」は、職種を問わず普遍のテーマ。経営者のみなさんに響くように、ちょっといつもとは違うアレンジを加えてみました。
2024年になってから講演の冒頭では、必ず能登半島地震のニュースについて触れています。
人生は予測不可能であり、いつ何が起こるか分からない不確かなものであることの象徴が自然災害です。
そうした中で「大切な人に自分の思いを伝える」こと、改めて人生会議(ACP)の重要性を私たち自身が実感しています。
「大事だ、大事だ」と言葉だけで終わらせず、しっかりとみなさんが実践していただけるように導けるような講演にしたいと、自分たちの身が引き締まる思いです。
「病気になったから」
「人生の最終段階に差し掛かったから」
「将来が不安だから」
というきっかけではなく「いま、この瞬間を大切にして生きる」ことを意識していただけるように、そして、大切なひとに自分の思いを伝えてもらえるように、講演させていただきます。
冒頭ではクリニック開業までの経緯をお話しするとともに、過去にテレビ放送で取り上げられた実際のお看取りの様子を紹介しました。
「人生会議とは、大切な人に自分の思いを伝えておくこと」が、私たちの一番お伝えしたいことだとお話ししました。講演のタイトルになっている「縁起でもない話で幸せになれる後悔しないための会話」そのものです。
ありふれた日常の中で、お互いにどんな考えを持っているのかを確認し合う、話し合うことが大切なのは、なぜか。
それは自分のことは自分しかわからないからです。
自分がしてほしいと思うことと、家族のしてあげたいと思うことは一致するわけではありません。
だからこそ「死ぬときの話をするなんて、縁起でもない」と思われても、その"もしものとき"の話をしておかないと、希望は実現しないと思ったほうがいいでしょう。
救急搬送される約70%の方が自分の思いを言えず、望まない治療を受けている実態があります。中には「俺を治療する必要なんてない」と処置室で叫ぶ方もいらっしゃいます。でも外でご家族は「助けてやってください、お願いします」とおっしゃるものです。命が助かっても元の生活には戻れず、長い闘病生活が始まる場合に70%のご家族は「これで本当によかったのだろうか」と悩むことになります。
元気なうちに「自分にもしものときは、こうしてほしい」「これはしないでほしい」と伝えておく必要があります。
縁起でもない話は、縁起でもない状態になってからではもう遅い。今しかできない、ことを知ることから始まります。
講演前半の概要については、以下の動画をご覧ください。
今回受講された方は、医療者ではありませんので「人生会議=ACPを知っている方?」と挙手をお願いして、2割程度しか手があがらないのはいつも通りのことです。そもそも知らなければ、人生会議を実践できるはずがありません。
しかし、こうして知識を得ても、実行するまでにはハードルがあります。
だから後半では、参加した皆さんがより効果を感じられるように、人生会議の実例を紹介しました。
息子に後を継いでほしいという意志は、人生会議の一部です。この内容を奥様や息子さんと共有し、残された半年間は治療を受けながら引き継ぎの時間として有効に過ごされました。
家のことをきっかけに大切にしている人や思いを巡らせることができたのではないでしょうか。
私たち医療者はお金や遺言の専門家ではないので、あまり詳しくないのが正直なところです。しかし、人生の最終段階をご一緒させていただく中で、このようなご相談を受ける機会が少ないため、いつも頼りにしている司法書士さんをご紹介しています。
限られた時間の中で、司法書士さんはBさんの望む形で整理してくれました。Bさんの子どもを思う気持ちも「大切な人に自分の思いを伝える」人生会議です。
そこで初めて、病院での治療をしていないから診てもらえないこと、かかりつけの先生は往診に対応していないことに気がつき、かわべクリニックと出会うことになりました。
訪問診療の初回には、涙しながら「痛みなく穏やかにここでいきたい。心でこれで夢が叶いそう。これからよろしくお願いしますね」と、私に手をそっと差し出されました。
葬儀で呼びたい方の希望をご家族と共有されました。これもまた人生会議の、大切な人に自分の思いを伝えることの一つです。
肝臓がんで、約1か月程度が残された時間。少しずつ食欲がなくなっていました。しかしある訪問の日、Dさん宅にはたくさんの郵便物が届いていました。食欲はないけど「私が好きだったものをお取り寄せして、少しだけど食べられるのが幸せ。今は便利なのよ、全国の食べ物をお取り寄せできるから」と笑顔で話されました。
ご家族には「食べたいとき、食べたいものを食べたい量でいいですよ。Dさんは点滴をしなくても病気が進むことはありません」と説明していたので、ご家族も嬉しそうにそのときの思い出を語り合いながら一緒に食事をされていました。
「自宅でプチ旅行している感じで楽しんでいます」とご家族も穏やかな雰囲気で話していました。まさしくこれが人生会議なんです。食べる、食べないだけではなくって、食事をきっかけに大切にしている人や思いを巡らせることができます。
実際に講演会でも、近くに座っている方同士で「今日が最後の食事だとしたら何を食べたいか?」と交互に質問をしてしまったところ、とても盛り上がりました。
「縁起でもない」と思われる話でも、テレビドラマや保険のCMを見ながら、などちょっとした工夫で、カジュアルにお話ししやすくなります。
講演の後半の様子もぜひ動画でご覧ください。
家族は私の気持ちをわかってくれている、察してくれていると思っていませんか?
そう、多分、わかってくれているし、察してくれていると思います。でも、本当の自分の気持ちや自分のことは自分にしか分かりません。
私が看護師をしていて感じたことですが、
「患者さんがして欲しいと思うこと」 と 「家族のしてあげたい」 と思うことは決して一致するわけではないんです。思いは伝えないと実現しません。
そして、あなたの思いを伝えておくことで、ご家族やご友人の心の負担は軽くなります。
「大切なひとに自分の思いを伝えること」で希望の扉が開かれます。
人生会議に興味は持ったけれど、なかなか実行に移せないという方は、私たちが東大阪プロジェクトとして定期的に開催している「縁起でもない話をしよう会」への参加も検討してみてください。おだやかな雰囲気の中で、自然と人生会議に取り組めるはずです。
・大切な人に自分の思いを伝えること、思いは伝えないと実現しない、今日から実践したいと思います。
・避けがちな死という現実に対する気持ちの持ち方、心掛けが大切だと思った。
・人生会議・ACPを地域に根付かせようと活動されている川邉先生の話を聞けて良かったです。自分の地域でも「おだやか」をテーマに人生会議を広めていきたいと思います。
・両親を思って講演を聞かせていただきました。家族なのできれいごとばかりではなく、感情も入って、会議もすんなり出来ないだろうと思いますが、自分たち家族の為にも後悔しないように繰り返し話をする機会を探っていけたらと思いました。
・これから何をしたいのか、何ができるのかをゆっくりと夫と話をした事が無いと改めて思いました。日頃より聞ける雰囲気を作っていこうと思った。
・人生会議は家族の闘病がきっかけで皆でやるいべきことは話し合ってきたがその気持ちが変わることもある。改めて、時折、話をしてバージョンアップしていかなければときっかけになった。
この先も気軽に人生会議・縁起でもない話ができるような地域にすべく、多くの場所でお話ししていきます。
そして、ご入用があれば、いつでもどこでもお話しさせていただきますので、私どもまでご相談ください!
お問い合わせフォームは「かわべクリニック」ホームページにも設置しています。
【今週の東大阪プロジェクト】
東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます。ぜひご参加ください
【お知らせ・地域連携皮膚ケア講演会】
下記の通り講演会を開催します(ハイブリッド形式)
現地での懇親会もあります(参加費無料 先着100名)
【申し込み】
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地域の制限はありません、お気軽に申し込みください!
【地域連携・皮膚ケア講演会】
日時:令和6年7月6日(土)17時〜21時(16時30分より入室可)
定員:オンライン500名・現地100名(東大阪商工会議所・河内永和駅すぐ)
対象:医療従事者・介護支援専門員・介護福祉士など
(地域の制限はありません。各地からお申し込みください)
参加費:無料
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