第1回委託先居宅介護支援事業所連携会議で講演しました
平素より多職種連携でお世話になっている地域包括支援センターくつろぎ管理者松山修一郎さんよりご依頼を受けて、東大阪市の居宅介護支援事業所介護支援専門員様を対象に講演する機会をいただきました。
地域包括支援センターくつろぎは、今年4月に誕生したばかりのため「居宅介護支援事業所の介護支援専門員さんと顔の見える関係を築くきっかけとなり、少しでも有用な情報をお届けできる機会としたい」とのご依頼でした。
そこで決めた講演テーマは「広げよう!地域で支え合い!~幸せに暮らせるまちを多職種でつくる~」です。
当初の会場は、普段まちカフェを開催している「OPH長瀬さくらテラス会議室」を予定していたそうです。ところが、ありがたいことに予定の人数を大きく上回る参加希望があり、急遽、東大阪市リージョンセンター文化ホール(近江堂)に変更となりました。
平日の昼間にも関わらず、50名を超えるご参加をいただき嬉しい限りでした。
私たちはこの講演を通じて
「私たちと一緒だから出来そう!」
皆さんにそのような気持ちを持ってもらえたら良いなと思っています。
今回、ケアマネージャーさんに最も伝えたかったことは、病の軌跡についてです。
人が亡くなるまでには大きくわけて3つのプロセスがあり、死に至るまでのプロセスがそれぞれ異なることを知っておくことが大切だと考えます。
それぞれの患者さん・利用者さんの病気の特徴を踏まえておくことで、よりよい死を迎えるための個別的なケアマネジメントを提案することができます。
「1」のがんでは、初期は全般的機能は保たれているが、最期の1~2カ月で急速に機能が低下することが特徴です。
一方「2」呼吸不全や慢性心不全患者の軌跡は、増悪と寛解を繰り返し終末に至ることが特徴的です。
がんについて、もう少し詳しく説明したいと思います。
がんは、はじめの数ヶ月から数年間、全般的に機能は保たれますが、最期の1~2カ月で急速に機能が低下します。
亡くなる2ヶ月くらい前から、変化が出始め、1ヶ月前くらいでは、週単位で状態が悪くなり、1週間を切ると、1日単位で状態が変わってきます。
このことから、がんの終末期であらゆる面で介護が必要となるのは、最期の1~2カ月です。
だからこそ、在宅医療によってしっかりと症状を緩和できれば、ご家族の介護の負担も長期にはならず、自宅での看取りは十分可能であると言われています。
つづいて実例を用いて、ケアマネージャーさんだけでなく医療従事者も間違えてしまいがちな3つのポイントを解説しました。順番に紹介します。
終末期に点滴を行わないほうが、患者さんにとって苦しみが少ないということ。これは私自身も患者さんの姿から教わってきたことです。
がんの末期になると、細胞が水分を取り込めない状態になるため、いわば点滴で無理やり水分を供給することは逆効果になってしまう場合があります。腹水や胸水がたまること、むくみが増えること、呼吸が苦しくなるなどにもつながります。
つまり終末期の点滴は。患者さんを苦しめる場合が多いため、たんぽぽクリニックの永井康徳先生は「最期の1週間は点滴をしないという選択がある」とおっしゃっています。
緩和ケアの本質は、生活の質の向上であり、最期まで穏やかに生活できるようにつらい痛みを取り除くこと、または和らげることです。
しかしアメリカで発表された論文では、早期から緩和ケアを行った方々は、必要が生じてから緩和ケアを受けた患者さんよりも生存期間が長かったとされます。
この理由は断言できませんが、
などの説が考えられます。
早期に緩和ケアを受けた方は、QOLの向上が見られ、抑うつ症状が少なかったというデータも得られており、今後緩和ケアの必要性の広がりを示唆しているといえそうです。
余命が月単位と見込まれるがん患者さんの生存率の比較グラフです。
在宅療養と緩和ケア病棟で比較を行うと、在宅医療のほうが生存が長くなるデータが得られたというものです。
「老老介護は大変だ」「病院のほうが安心だ」と唱える方もいらっしゃいますし、実際に病院からの患者さんを紹介される際に「高齢のご夫婦なので、最期までご自宅で過ごすのは難しいと思いますが…」と枕詞がつけられることもよくあります。
しかし「病の軌跡」で触れたように、本当に目の離せない介護が必要となるのは余命が1~2週間の時期です。高齢者の場合は、動けなくなる、ADLが低下するのは少し早いため、介護の期間が少し長くなりますが、それでも長期間ではありません。
必要なときには、ヘルパーなど介護支援を受けられれば、多くの方が直感的に思い浮かべるような老老介護の姿とは異なります。
一方、面会のために病院に行かなければならないしんどさは見落とされがちなように感じます。
講演で紹介した事例に登場する患者さんは「80歳を超えた足の不自由な妻が毎日、見舞いに来ることは大変だろうし、病室では休むところもなく疲労もたまることを心配している」と話していました。
自宅から最寄り駅まで徒歩20分、電車を乗り継ぎ、駅から病院までまた15分ほど歩かねばなりません。1日のほとんどを病室の椅子で過ごし、洗濯物を持ってまた帰宅する日々です。
そして、翌日も朝から面会に。
これでは奥さまには休む時間も場所もありません。このような背景があるケースも考慮して「すべて病院がよい」でしょうか。
「病院の方が安心」という言葉は、患者さんの身近にいる人より、少し距離のある方が言われることが多いです。おそらく、自分がみてあげられないという気持ちもあるのでしょう。
入院後の患者さん自身も「入院することの安心感」と「入院したから会えない不安感」の狭間で苦しむことがよくあります。
在宅を選ばれた方(この事例の奥さまもそうでした)は、「私にできることは私がします。病院に行くよりも自宅で介護する方が断然楽です。困った時には助けてください」と話されます。
どの選択肢が、その方にとって最適か。答えは1つではないということを多くの人が知ることが大切だと考えます。
最後は、私たちが行う東大阪プロジェクトの活動についても説明しました。
私たち東大阪プロジェクトの理念は、「人とまちと医療が心地よい関係」を目指すことです。
まさしく職種の境があいまいな関係が築けるような街づくりを目指します。
今回ような講演の機会を通じて、一緒に地域づくり・街づくりに取り組んでくださる方が1人でも増えることを、私たちは心から願っています。
【今週の東大阪プロジェクト】
東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます
>>ぜひご参加ください<<
【令和5年度大阪府在宅医療総合支援事業(ハイブリッド)(参加費無料)】
主催:大阪府医師会
アドバンスケアプランニング研修会のご案内です
ご興味をお持ちの方は、ぜひご登録ください!
【申込方法①オンライン受講】
※申込用紙はこの記事の下部に画像を添付しています。
FAX:06-6765-3737(大阪府医師会地域医療2課行)
日時:令和5年11月25日(土)14:00~16:00
会場:大阪府医師会館2階ホール・オンライン
対象:医療介護福祉に関わる職種(地域制限はありません)
話題提供:元気なうちに「もしものとき」を考えるACP(人生会議)
講師:かわべクリニック 院長 川邉正和
かわべクリニック 看護師 川邉綾香
最新の記事
ハッシュタグ