東大阪プロジェクト
かわべクリニック
かわべクリニック
トップへ戻る

かわべクリニック ブログ

後悔しないように生ききった【看取りの報告書・BIさまのこと】

かわべクリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。
これまでお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出とともにご紹介したいと思います。

最も安心できる場所を求めて

病院への看取り報告書

いつもお世話になっております。
先日ご紹介をいただいたBIさまについてご報告させていただきます。

退院後の初めての訪問時、BIさまは入院中の出来事や先生方の心優しい気遣いに感謝の意を述べられました。また呼吸が促迫しながら、途中で娘さまから休憩を促されも、1時間以上お話をお聴きする機会をいただきました。

痛みに関しては、できる限り自由な動きができるようにするべきと判断し、オキファスト持続皮下注射からフェンタニルテープに変更しました。(がんによる激しい痛みを緩和する効果)

幸いなことに、痛みをうまくコントロールできました。在宅酸素は使用しつつも、自由に動けるようになったことで、BIさまからは「10年来文通している彼と最後に会いたい」という希望があり、そのために髪を整え、幸運にもその願いを叶えることができました。

その後も日中はパッチワークや筆絵などに取り組まれ、穏やかな時間を過ごしていらっしゃいました。

しかし、同じ月の下旬には終末期せん妄症状が現れたため、BIさまが強い口調で話す様子を娘さまは受け入れられず、涙を流しながら鎮静を希望されました。看取りの過程に起こる一時的な現象であることを説明し、薬剤を調整するとすぐに改善され、娘さまも穏やかな表情で安心された様子でした。

そして翌月4日未明に、ご家族に見守られる中で安らかに永眠されました。娘さまからは「母は30年前に乳がんになりましたが、それでも明るく元気に闘病している姿は、同じ治療を受けている他の患者さんたちにとって希望となる存在でした。途中、苦しいこともありましたが、最後に先生方との出会いがあったことで、穏やかな最期となり、本当に良かったです」と誇らしげにおっしゃられていました。

この度はご紹介いただき、誠にありがとうございました。
今後ともよろしくお願い致します。

「急」とは何か~時間を考える~

今、私はこのようなお看取りをする仕事をしていて、たくさんの方々と出逢います。
そこでふと、考えることがあります。

「自分はどのように生ききりたいか?」

自分の希望を叶えるには、何が必要なのでしょうか?

・ひと
・もの
・お金
・時間

おそらく、どれもある程度は必要だと思います。
このなかで今回は、時間について考えてみます

終末期がん患者さんのケアを行っていると、家族からは「急に亡くなった」という声が聞こえ、医療従事者は「急変」という表現を頻繁に使うことに気づきます。

「急変」とは文字通り、患者さんの状態が急に悪化することです。定義はさまざまですが、意識障害や呼吸停止、心停止など何らかの原因によって突然に患者さんの生命が危機的な状態に陥ることを指します。

では、がん終末期における急変について考えてみましょう。

本当に突然なのでしょうか?
事前に予測することはできないのでしょうか?

核家族化が進んだ現代、看取りの経験がない家族が増えており、病院で死を迎えることが一般的になっています。
死に向かうプロセスを身近に体験する機会がないため、家族の最期をそばで見守ることに不安を感じることも理解できます。

そのため、私たちは日々の丁寧な説明やケアを通じて、不安を和らげる努力をしなければなりません。

医療者ができる最適な説明は

私たちはどのような説明を行うことが適切でしょうか? まず「病の進行」の理解が前提ではないかと考えます。

つまり、死へと至るまでのプロセスを知ることです。死へと至る進行は個人によって異なることを理解することで、患者さんの状況に合わせた最善のケアを考えることができます。

厚生労働省が2021年に調べた「人口動態統計(確定数)」によると、死因のトップは「悪性新生物」で、26.5%を占めています。次に多いのは「心疾患」で14.9%、以下「老衰」10.6%、「脳血管疾患」7.3%、「肺炎」5.1%と続いています。

人はいずれ終わりを迎えます。病によって亡くなることが多い中、どのような疾患を抱えるのか?

この病の軌跡を知っておくことで、残された時間を豊かにいききる可能性は広がります。

<病の軌跡 (3種類)とがんの病の軌跡>

老人の在宅看護と、がん終末期在宅医療の違い

出典:Lynn J, Adamson D. M:Living well at the end of life Adapting health care to serious chronic illness in old age, RAND Health, P.1〜19, 2003.

中河内医療圏がん診療ネットワーク協議会緩和ケア部会研修会で講演を行いました

医療者ができる最適な説明は

私が日頃関わっているのはがんを患う方が特に多いです。
がんは当初の数ヶ月から数年間、全般的に機能は保たれますが、最期の1~2カ月の急速な機能低下が特徴です。

つまり亡くなる2ヶ月くらい前から変化が出始め、1ヶ月前くらいになると週単位で状態が悪くなり、1週間を切ると昨日と今日で状態が変わってきます。
したがって、がんの終末期であらゆる面での介護が必要となるのは、最期の1~2カ月です。

だからこそ、在宅医療によってしっかりと症状緩和がなされれば、ご家族の介護の負担も長期にはならず自宅での看取りは十分可能であると言われています。

このような病の軌跡を知っておくだけで、残された時間に「自分は何がしたいのか」「何ができるのか」そのために何に困っていて「何を解決すれば自分の希望が叶えられるのか」を考える時間が与えられます。
酷な話と感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、自分が豊かに生ききるための大切な時間と自由を私たちが奪ってはいけません。

丁寧にきちんと誠実に説明することで、患者さん自身で考え私たちに気持ちを伝えることで希望を実現できます。

私たちは現実から目を背けてはいけません。
死と向き合う患者さんから私たちが逃げず、誠実に接することで、患者さんが豊かに生ききる可能性は残るのです。

【今週の東大阪プロジェクト】

東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます

>ぜひご参加ください<<

【第2回まちの保健室(参加費無料)】

より豊かな人生を楽しめるように。
「まちの保健室」はいつでもあなたをお待ちしています。

【申し込み】
不要です。当日会場にお越しください。

☆受付定員には限りがあり、相談をお待ちいただく場合もあります

開催日:2023年8月9日(水)(毎月第2水曜日)
時間:14:00~16:00(入退室は自由です)
内容:健康チェック・健康相談・がん遺族サロン
会場:カトリック布施教会 教室4

東大阪市永和1-10-10
河内永和駅より徒歩5分

参加費:無料

病院へ行くほどではないけれど、最近ちょっと気になることがある。
さまざまな不安や悩みを看護職に 気軽に相談できる場所。
生徒の相談や癒しの場でもある学校の保健室のように、さまざまな不安や悩みを看護職に気軽に相談できる場所。
さびしさ、悲しさ、会いたい気持ち、いろいろなこと、話しにきませんか?

こころの中の大切な人と一緒にふたたび歩き始める。そのきっかけにしてください。
こどもからお年寄りまで、誰もがより健やかに生きるために、人と人がふれあい、より豊かな人生を楽しめるように。
「まちの保健室」はいつでもあなたをお待ちしています。
まちの保健室のご案内
※クリックするとPDFが拡大表示されます

★チャンネル登録お願いします★

東大阪プロジェクトでは、医療介護従事者だけでなく地域包括ケアシステムに関わる皆様に役に立つ情報提供を行っています。
「チャンネル登録」していただければ幸いです。
東大阪プロジェクト 公式チャンネル