【看取りの報告書】BBさまのこと
クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。
今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。
いつもお世話になっております。BBさまについてご報告させていただきます。
急な退院だったため、初回訪問にお伺いさせていただいた時は介護用ベッドの搬入途中で組み立てが完了されていない状況。
布団を床に敷き、背上げした状態で待っているBBさまと対面いたしました。
その後、ベッドに移動介助をしようとすると、「自分で赤ちゃんのように移動できるよ」と、ご自分で移動され、その姿を娘さまは微笑ましく見ておられました。
体動により喘鳴が出現するため、予後は短く数日かと想定していましたが、モルヒネによる症状緩和が著効し、しばらくの小康状態が続きました。
日々の診療の中で、娘さまと一緒にBBさまの保清を行っていると、娘さまは
「久しぶりのシーツ交換や寝衣交換だわ。
ここにきて、お母さんの命の力に驚かされる。
勉強させてもらっているわ。
ありがとう!」
と何度も感謝の気持ちを口に出されていました。
病院では会えていなかった息子さまご家族とも会え、落ち着いた穏やかな療養時間を確保することができました。
そして、退院して9日目に、ご家族さま全員に見守られる中、安らかに永眠されました。
新型コロナウイルス流行に伴い、療養する場所を自由に選べない環境にある中、私たちはできる限りご自宅での看取りの支援を続けて参ります。
この度は、ご紹介ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。
[ケアを振り返って]
コロナウイルス感染症が猛威を振るい、病院全体に混乱が生じていた頃。
がん終末期と診断されたBBさまは、発熱するとコロナ病棟へ、腫瘍熱だと一般病棟へとベッドの移動を余儀なくされ、落ち着いた療養ができない環境でした。
娘さまは、同じ病院で看護師として勤務しているにも関わらず、面会制限のため、家族の一員としての面会は叶わない日々だったのです。
食事摂取量が減り、活気も明らかに低下してきていると感じていた頃、突如として主治医から娘さまに、「危険な状態です。予後は数日かもしれません」と告げられることに。
そこまでの状態とは思ってもいなかった娘さまの願いは、「母を自宅に連れて帰る」でした。
金曜日のお昼前、病院から緊急の依頼電話。
娘さまの「今日、退院できたら嬉しいです…。退院できませんか?」の決意とも取れる電話の声。
帰りたいと思ったときが帰るとき。
そこから介護用ベッド、在宅酸素の設置、持続皮下注射の器械などをすぐに手配し、夕方の退院にこぎつけられました。
このまま会えずに過ごすことはできない。
少しでも一緒に過ごしたいと願った娘さま。
ご自宅に戻ることができて、安堵の表情を浮かべるBBさま。
張り詰めた緊張と会える喜びが溢れていました。
ご自宅で穏やかに過ごしていただくために、疼痛緩和の麻薬製鎮痛剤の持続皮下注射と在宅酸素投与は継続しましたが、全身浮腫と湿性咳嗽を伴っていることもあり、過度と思える点滴はせず、自然な形で過ごしていただくこととしました。
娘さまは、
「母の底力には驚きます。
何も飲んでいないし、点滴もしていないのに、苦しそうではありません。
病院で看病していた姿とは違い、何だか楽そうです。
そう思うと最期のときの在り方を考えさせられますね。
母を通して、看護のあり方をもう一度考え、学び直すことができているかもしれません」
と話されました。
今までは、病院で亡くなることが一般的でした。
しかし、このコロナ禍において、最期の時間を過ごす場所として「ご自宅」を選択肢として挙げることで、穏やかな自然な看取りを考えるきっかけとなっているように感じます。
ご自宅でも最後まで過ごせる、お見送りできるということを知っていただくためにも、医療者が障壁となってはなりません。
選択肢のひとつとして、「自宅での看取り」を提供できるような社会にしたいと、心から思います。
そのために、何よりも患者さまの声、願いを聴かねばなりません。
そして、その想いを叶えるため、在宅チームが一丸となって支える。
実践する勇気が大切です。
今年も残された日は少なくなって来ました。
年末年始をご自宅で過ごしたいと思う方々の希望を叶え、支えとなれるように努めていきます。
【今週の東大阪プロジェクト】
東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます
>>今週ご紹介する動画<<
【講演会】緩和ケアになくてはならない地域連携について
~人生最大のゴールを人生最善のゴールへ~
2022年4月23日 地域連携×緩和ケア講演会(東大阪プロジェクト主催)
国立病院機構大阪南医療センター緩和ケアセンター部長 上島成也 先生
是非、ご覧ください!
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