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【看取りの報告書】AYさまのこと

クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。

今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。

AYさまのこと
~帰りたいと思った時が退院する時!~
希望は早めにキャッチして、安全に自宅へ

いつもお世話になっております。AY様についてご報告させていただきます。
受け手である私たちも驚く、急な娘さまからの退院希望にも関わらず、詳細な診療情報提供書及び看護サマリーを作成していただき、ありがとうございました。

夕方17時に自宅に戻られたAYさまは、自宅に戻った認識はあるものの、せん妄状態は変わらず。
トイレに行きたい衝動を抑えられず、日に何度も何度も、娘さまとお婿さまの力を借りてトイレ移動をされました。
退院した日の夜は比較的穏やかでしたが、翌日は昼夜問わず、熱せん妄および終末期せん妄状態でした。
その姿をみて、娘さまは、「穏やかな父の姿であれば孫に会わせたいけど、今の状態だと怖がると思う。本当に連れて帰って来てよかったのか」という思いに苦しんでおられました。

少しずつ鎮静レベルを上げ始め、仙骨部の処置も娘さまと行い、AYさまの苦痛の原因について、一緒に向き合っていただきました。
そして、徐々に意識レベルが低下していく中で、穏やかに眠っているAYさまのベッド周囲には、お孫さまが作った鶴や似顔絵が飾られるなど、変化が見られました。

そして退院して5日目、お孫さまを含めご家族さまに見守られる中、安らかに永眠されました。
当クリニックは「帰りたいと思った時が帰るとき」、この気持ちを大切に、医療を行っています。
この度は、ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。                                  

[ケアを振り返って]
新型コロナウイルス感染症は未だ終息する気配はありません。
未だに、医療体制に多大な影響を及ぼしています。

このコロナ禍において改めて感じたことは、選べる自由、つまり選択肢が狭くなったということ。
「最期を病院で過ごす」ことを選ぶことにより、大切な家族、友人と会えない日々が続いてしまう…。
家だと医療面で不安だけど家の方が良いのか…といった、苦渋の選択となることもあります。

私たちは、コロナ禍となる前から、在宅療養を選ばざるを得ない、消極的な選択肢として在宅医療を選ばれた患者さま、家族さまに、後悔の念を抱かせず、最期までご自宅で穏やかに過ごせるように配慮をしてきました。
コロナ禍となってもその気持ちは変わりません。

だから、コロナ禍となり、「一時的にご自宅で、最期は病院で」と考えていた患者さまでも、「最期までこのまま自宅で過ごしたい」と思っていただけるケースが多くあるのだと感じています。

何より、苦しみがありながらも、家で最期まで穏やかに過ごせる満足感、安心感があるのは、多職種連携がきちんとなされているからでしょう。

このケースは、
『土曜日の昼下がり。定期訪問を終え、残務整理をしていたところ、クリニックに一本の電話がかかってきた』ところから始まります。

娘さまより、
「初めまして、今よろしいですか?
父が、A病院で白血病の治療中なのですが、コロナの影響で面会制限があり、ほとんど会いに行けていません。
大きな変化があると主治医から電話で病状説明があり、先週の時点では抗癌剤をしたいと説明を受けていました。
それが、さっき病院から電話があって、病状が変化した。痛みとせん妄がひどくなり、麻薬の量を増やしたら、もう二度と意識が戻らない可能性がある。
命があと数日かもしれないとも言われました。
面会制限があるので、孫を病院に連れて行くこともできないないし…。
父と電話で話をしたら『今までありがとうな』と言われた(号泣)。
私は孫に会わせたい。生きている間に連れて帰りたい。
無理でしょうか?」
と悲痛な叫びでした。

さぁ、いかがでしょうか?

娘さまのお気持ちはわかる。しかし、紹介状もなく、急な依頼。
さすがに難しいかもと思うところですが、「無理でしょうか?」と言われると、無理とも言いにくい…。
状況として、明らかに準備が整っておらず、安全に帰宅することすら難しい。

コロナの影響はここまで来ているのか。
終末期の患者さまでさえ、面会が制限されているのか…と感じました。

幸いなことに、この日は病院主治医が出勤されており、家族の電話対応にも応じてもらえました。
何よりありがたいことに、主治医が家族の想いに応えるべく「紹介状(診療情報提供書)」を作成してくださることに。
感謝でしかありません。

娘さまの依頼電話から1時間が経った頃、紹介状がFAXで届き、同時に病院主治医よりクリニック医師に対して電話での情報提供もありました。

私たちは、家族さまに病状を含め、電話で説明。
改めて、患者さまを自宅に連れて帰る気持ちの強さを知りました。

そこで、クリニックの理念でもある、患者さま、ご家族さまの気持ち「最期は自宅で」「自宅に帰りたいと思った時が退院するとき」という希望をかなえるため、少しでも役立てればと動き出すこととなりました。

ここで、日頃からの連携の力、在宅医療・介護の連携の力を発揮!
1)在宅酸素機器メーカーに在宅酸素の手配を行う(自宅と病院に酸素ボンベの配置)
2)訪問薬剤管理が可能な薬局に休日調剤が可能であるか、麻薬の在庫があるかを確認
3)クリニックにある持続皮下注射の器械(テルヒュージョンポンプ)が出払っていたため、医療機器会社に依頼し、特別に病院から週末だけ借りて帰ることに。
4)ケアマネージャーに介護タクシーの手配を依頼

どのような状況であったとしても、私たちは人生の最終段階にある方の支えとなることが求められています。
私たちに出来ることは、その人の苦しみをキャッチして、支えとなり、「選ぶことの出来る自由」を叶えることです。

今回の場合は、突如として、最期の時をどのように過ごすのか選択を迫られた家族。
人は迷うもの。正しい答えもない。
共に話し合い、ACP(人生会議)を何度も行い支え続けることが必要です。

日頃から顔の見える関係を築き、お互いの得意分野を知り活かし、どんなネットワークがあるのか、情報共有することが大切です。
そして、何よりもご家族さまが
『家の力を信じる!』
『自宅に連れて帰りたい』
と選んだことを後悔されないように、全力で、在宅医療・介護がチーム一丸となって支えることが必要であると考えます。
チーム一丸となってはじめて、苦しむ人の支えになることができます。

これからもひとつの施設で抱え込むことなく、顔の見える関係を築き、各々の強みを活かせる多職種連携を行なっていきたいと思います。

【今週の東大阪プロジェクト】
東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます

>>今週ご紹介する動画<<
【地域連携】 豊かに生ききる 看取りの報告書
私たちは今、「なんのために生きていますか?誰のために生きていますか?」そんなことを問いながら、人生の最終段階の方が穏やかなエンディングになるように心を込めたケアをしていきたいと思います。

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