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【看取りの報告書】AJさまのこと

クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。

今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。

AJさまのこと
君を追って…~寂しさと達成感。向こうでも二人仲良く過ごしてね~

いつもお世話になっております。
10月にご長女さまからの依頼で在宅訪問診療をさせて頂きましたAJさまについて、ご報告させていただきます。

ご長女さまとそのご家族が暮らす家での療養を開始したAJさま。
当初は住み慣れない街に少しの戸惑いを口にされていましたが、毎週末はご長女さま家族とショッピングや外食に出かけ、有意義な時間を過ごされました。

AJさまは同じように体調の芳しくないご主人さまとベッドを並べ療養し、ご主人さまのお世話を献身的に行いながら、ご自分の病の進行とも闘う日々。
やがて6月末ごろより急激なるい痩やADL低下をきたし、床上での時間が長くなりました。

AJさまは貴院の受診を毎回心待ちにしており、最良の治療を受けることが出来た感謝を常に述べておられました。
7月の受診の際は、最後にA医師に対面してこれまでの感謝をお伝えしたいと希望され、それに向けて体調調整を行いました。
受診の際には待ち時間などにご配慮いただいたことを、改めて感謝申し上げます。
AJさまも「先生にお礼が言えてほっとした」とおっしゃっていました。
そして一つの目標をクリアしたことに安心したのか、翌週からはさらに入眠時間が長くなりました。

最期の日までご自分の要望をご家族に伝えることができ、ご主人さまや娘さまが見守る中、安らかに永眠されました。
その後を追うように、長年COPDの療養をしていたご主人さまが7日後に永眠されました。
ご主人が永眠されることは我々の予想よりも少しばかり早かったのですが、AJさまご夫妻らしい旅立ちであったと思います。

この度はご紹介ありがとうございました。
今後ともよろしくお願い致します。

[ケアを振り返って]
病院勤務の看護師であったのご長女さまの希望は、
「母を自宅で看取りたい。その希望を叶えるために協力して欲しい」。

他県に暮らしていたAJさまご夫婦。
慢性閉塞性肺疾患のあるご主人さまはご長男夫婦が見守り、AJさまはご長女さま宅へ移動。
二人は離れて生活することになりました。
寂しさや不安、心配もあり、頻繁に連絡を取り合っていたのが印象的でした。

半年が経過した頃、離れて暮らすご主人さまの体調も悪くなり、ご長女さまはご両親を看ることを決意。
仕事に介護に、そして妻として母として、すべてを一気に担っていた看護師であるご長女さまをチームの一員として、連携してAJさまご夫婦を支えていくことをお約束しました。

AJさまとご主人さまのベッドが並ぶ寝室。
AJさまの診察中、横にいるご主人さまの息遣い、咳嗽、食事量の低下、トイレにこもっている時間が長い…。
色々なことが気になり困り事を確認すると、「先生、僕も診てくれないか。いつも相談に乗ってもらっていたけど、正式にお願いしたい」と言われました。
AJさまも安堵の表情になり、「二人で先生に任せよう」とおっしゃいました。

AJさまのお看取りが近くなるにつれて、活気がなくなり食事量が低下するご主人さまに、励ましでもなく応援でもなく、ただ“見守る存在”であり続けることに徹しました。

AJさまのお見送りの際、人目をはばからず号泣されるご主人さま。
「これからが心配、どのようなグリーフケアができるのか」とスタッフと話し合いました。
そして、1週間後の定期訪問を明日に控えた前日の夜、ご長女さまからの電話が。
「父も母のもとに逝きました…」

「母の葬儀で親戚一同が集まり、父を励ましてくれたけど、父は元気がなく、食事もめっきり減って、『早くAJのところに行きたい。会いたい。寂しい』と泣いてばかりいました。
両親を失ったことは悲しいですが、夫婦関係を思うと愛し合っていた両親を嬉しく思います」
そうおっしゃった、ご長女さまの晴れ晴れとした表情が、今も胸に残っています。

お別れは寂しく、悲しいけれど、生ききった過程にはすべて意味があるのではないかと感じます。

最後に、ご長女さまからいただいたお手紙をご紹介させていただきます。

秋の気配を感じられる季節となりました。
先日、父母の四十九日法要を無事に終えることができました。
ご挨拶が遅くなり大変申し訳ありませんでした。

父や母が生前の頃には、川邉先生をはじめみなさまには大変お世話になり、温かいお言葉や励ましのお言葉を頂きありがとうございました。
最後まで看取りたいという思いから自宅に引き取りましたが、全てが初めてで模索しながらの介護でしたので、本当に心強かったですし、不安なく母や父をお任せすることができました。
ありがとうございました。

少しずつ父や母の物を整理していくと後悔ばかりで“寄り添う看護”とは程遠く、どうしてもイライラして父や母にぶつけているんだろう、もっとこうしてあげれば良かった、優しい言葉をかけてあげれば良かったという思いがあり自分を責めることが多いです。

苦しみに耐えながら『なんでお母さんだけこんなつらい目に遭うの?』と言った母の言葉に返す言葉が見つからず、心の中でごめんねと言うしかなかったです。
そんな側で、母の事を気遣い、息が苦しくてしんどい中、母の為にと頑張っていた父。
母を亡くし悲しみに押し潰され『早く母ちゃんの所へ行きたい』と言った父の事が思いかえされます。

これで良かったのかな?安易に考えていたのかなという気持ちもありますが、父と母を看取ることが出来てよかったと思います。
夫や娘たち、夫の両親もいますので、家族のために頑張っていきたいと思っております。

あの日々を振り返りながらも前に進んでおられるご長女さまから、私たちも力を頂きました。

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