【看取りの報告書】AAさまのこと
クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。
今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。
[看取りの報告書]
いつもお世話になっております。
医療連携課よりご紹介いただきましたAA様についてご報告させていただきます。
ケアマネージャーさんより、「ここ数日でかなり弱っており、通院は困難な状態で場合によっては入院が必要かもしれないので往診をお願いしたいのですが可能ですか」と連絡を受け、貴院より早々に診療情報提供書をいただきました。
翌日に自宅に訪問したところ、AA様はすでに衰弱されておられ、予後は数日から1週間程度と予測される状態。
まずはこれまでの経過やAA様と奥さまの死生観を確認し、病院での医療、在宅での医療について説明いたしました。
そして、今の苦しみを取り除くための治療(フェンタニルテープなどの麻薬性鎮痛剤の開始)および環境の整備(介護用ベッド導入)を開始。
また、早々に訪れるであろうAA様の死を安心して受け入れられるように『看取りのパンフレット』をお渡しし、ゆっくりと説明させていただきました。
初対面の日につらい説明となりましたが、奥さまはご安心なさり、『自宅での看取り』をご希望。
それからは、毎日訪問して日々の体調の変化について説明し、不安の軽減に努めました。
春休み中という事もあり、おじいちゃん子であった新6年生のお孫さんが泊まり込み、一緒にケアの参加もしてくれて、穏やかな時間を過ごされているご様子でした。
そして初訪問から5日後、大勢のご家族に見守られる中、AAさまは安らかに永眠されました。
短い期間ではありましたが、住み慣れた自宅で穏やかな看取りのお手伝いが出来たことを嬉しく思います。
ご紹介ありがとうございました。
今後ともよろしくお願い致します。
[ケアを振り返って]
前回の記事にも書かせていただいたように、初回訪問でご本人さまやご家族さま「このクリニックに任せよう」と感じていただく必要があります。
なぜなら、私たちと出逢う患者さま、ご家族さまには残された時間が短い方もいらっしゃるからです。
AA様の場合、現状を見たケアマネージャーさんから「かわべクリニックさん、何とか診てください!」と依頼がありました。
AA様の苦しみをキャッチしたケアマネージャーさんが私たちにバトンを繋いでくれた結果、出逢うことができました。
そして、初回訪問。
奥さまからお話を丁寧にお伺いすると、2週間前に主病院に駆け込んだところ、入院は出来ないと他病院を紹介され、そちらに入院したものの、入院生活に馴染めず退院。
その間、弱っていく夫と共に過ごしてきた時間がとても不安で辛かったと胸の内を明かしてくれました。
AA様は入院したくない、奥様は不安で今のままではどうしたらいいのかわからない。
誰かの支えが欲しい。
その想いを叶えるべく、身体的、精神的ケアを行い、最期までケアマネージャーさんと連携を取りつつ自宅で過ごす事ができました。
印象的だった場面は、終末期せん妄で手を挙げたり降ろしたりするAA様の手を、お孫さんがそっと握る…すると、明らかに顔が穏やかになる。
まさに“温もりというお薬”が与えられた瞬間でした。
その光景をみている奥さまは、
「おじいちゃん子だったから、この風景を怖がるかと思ったけど、違うのね。この時間を過ごす事は大切なのね。今日の塾は休もう」
とおっしゃいました。
そして、その日の昼食時、AA様は永遠の眠りに尽きました。
AA様が大好きだったお寿司の出前を頬張りながら涙するお孫さまの姿に、私達まで胸が熱くなりました。
誰かが誰かを支える。
それは、家族であったり、介護者であったり、地域の人であったり、我々医療者であったり、誰でもよいのです。
その人のために、その人の苦しみの解決のために手を取り合って繋がることで、最終的には穏やかな最期を迎えることができると、私は信じています。
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