【看取りの報告書】Zさまのこと
クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。
今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。
[看取りの報告書]
いつもお世話になっております。
ご紹介いただきましたZさまについてご報告させていただきます。
在宅介入当初は、診察時は常に泣きながら「長生きはしたくない、病院には行きたくない、何でこんな病気になったの」と、精神的に不安定な面が強くありました。
先生にも薬物調整等のご教授いただきき、精神面での安定を図りました。
次第に精神面での落ち着きと共に身体的な改善も認められ、経腸栄養ではなく経口摂取での栄養管理が出来て腸瘻の抜去が可能となり、Zさま、またご家族さまにとって安定された療養生活となりました。
しかし娘さまにとっては、再発している状況にも関わらず、母であるZさまの希望である「治療を受けたくない、病院に行きたくない」を叶えることが本当にいいのか…。
迷い、涙される事もありました。
Zさまと家族さまとで何度も話し合い、残された時間を楽しんで過ごすと決めてからは、Zさまの体調の許す限り、ウインドウショッピングや映画鑑賞、物産展など、充実した時間を過ごされていました。
今年に入り、急速な腫瘍の増大、体重減少がありました。
Zさまは私たちに悟られたくないと、診察時に腹部を隠される仕草が見受けられるようになりました。
そして、「痛くないように苦しくないように眠っていたい」とZさまの意志を尊重し、診察・薬物療法にて緩和を図りました。
そして、大勢のご家族さまに見守られる中、安らかに永眠されました。
約2年という長きに渡り、Z家の愛情溢れる家族関係を見守らせていただけたことは私たちの宝となりました。
この度は、ご紹介ありがとうございました。
今後ともよろしくお願い致します。
[ケアを振り返って]
ある日、自宅の壁に掛かっていた表彰状を見て!というZさま。
それは、Zさまの誕生日の日に娘さまが書かれた感謝状でした。
人は誰かを失うことを恐れます。
一方で、抵抗できない現実に対して、解放されたいとも思うこともあります。
Zさまは「治らない病気であれば、治療したくない。家で家族と過ごしたい」という気持ちが強く、娘さまにとっては、「一日でも長く母には生きて欲しい。」「でも『病院に行きたくない、入院したくない、家にいたい』という母の気持ちも理解したい。」
母と娘、それぞれの苦しみ…それをどのように支えていくのか、それはまた私たちの苦しみでもありました。
話し合いを重ね、Zさまの「日々を穏やかに過ごすこと」の希望があり、娘さまも「泣いている母を見るのは悲しい」と気持ちを吐露。
家族みんなで見つけた答えが、「症状緩和をしつつ、行きたい所に行き、食べたい物を食べ、自由に過ごすこと」となりました。
穏やかな気持ちになったある日、Zさまの誕生日に娘さまが贈った感謝状。
ここには娘さまの母への感謝の気持ちだけではなく、娘さまがこれからの母との付き合い方の覚悟のようなものが伝わるってきました。
人は、ただ苦しむのではない。
その苦しみから得られるものがある。
あの日から壁に掛けられていた感謝状が、Zさま、そしてご家族さまの支えとなっていたように強く感じました。
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