シンプルかつ的確な報告ができる!「I-SBARC」を活用しましょう
こんにちは。看護師の川邉綾香です。
私は新人の頃、先輩看護師に一日の患者さまの状況報告をするのが苦手でした。
何を伝えるべきなのか整理して伝えることの難しさを、実感した記憶があります。
看護師同士だけでなく、看護師から医師への報告も重要です。
特に訪問看護師は、医師に電話で報告する場面が多々あります。
どうすれば、医師に患者さまの状況が的確に伝えられるのでしょうか。
一例を見てみましょう。
看護師:○○さんですが、熱があります。
医師 :(?…それで…?)
これでは、医師にはなにも伝わりません。
そこで、報告の精度をバージョンアップして
看護師:△△町にお住まいの○○さんなのですが、昨夜から熱があったようで、本日も訪問したら熱があります。
さらに詳しくするのであれば
看護師:△△町にお住まいの○○さんなのですが、昨夜から熱があったようです。
今訪問中なのですが、熱は38度、脈は90、SpO2は98%、呼吸回数15回。
活気はあり、水分摂取は出来ており、誤嚥している様子もありません。
ただ、昨日から尿量が少ないようです。腰背部痛は認めていません。
既往に膀胱炎を繰り返しているので、膀胱炎を疑っています。
ご本人には水分摂取は積極的に行うように説明しています。
急ぎませんが、本日中に診察をお願いできませんか?
このように報告すると、医師は
医師 :昼の診察を終えたら往診に行きます。それまでに、自宅にある抗生剤(○○㎎)と解熱剤(○○㎎1錠)を飲んでもらっておいてください。
と説明できます。そこで看護師は
看護師:わかりました。自宅にある抗生剤(○○㎎)と解熱剤(○○㎎1錠)を内服まで確認します。
と対応することができます。
肝心なのは「何のために報告しているのか?」を明確にすることです。
記録については、
・看護記録作成が苦手!という方へ 【POSとSOAP形式】
・なぜあなたの看護記録は伝わらないのか?看護師・川邉綾香が分析する「5つの理由」~続・看護記録作成が苦手!という方へ~
でもお伝えしましたが、口頭で報告する場合は、できるだけシンプルに、かつ効果的に報告することが重要です。
そこでポイントとなってくるのが「I-SBARC」です。
I : Identify(報告者・対象者の同定)
S : Situation(状況・状態)
B : Background (背景・経過)
A : Assessment (評価)
R : Recommendation (依頼・要請)
C : Confirm (口頭指示の復唱確認)
「I-SBARC」に沿った報告であれば、受ける医師は看護師が何を伝えたいのかがわかりやすく、対応しやすくなります。
「I-SBARC」の基本的な報告の手順と内容は、医師―看護師間をはじめとする患者さまを中心とした医療者のコミュニケーションには、欠かせない便利なツールです。
先程の報告内容を分析してみると、
△△町にお住まいの○○さんなのですが
→Identify (報告者・対象者の同定)
昨夜から熱があったようです。今訪問中なのですが、熱は38度、脈は90、SpO2は98%、呼吸回数15回。活気はあり、水分摂取は出来ており、誤嚥している様子もありません。
→Situation (状況・状態)
ただ、昨日から尿量が少ないようです。腰背部痛は認めていません。既往に膀胱炎を繰り返しているので、
→Background (背景・経過)
膀胱炎を疑っています。
→Assessment (評価)
ご本人には水分摂取は積極的に行うように説明しています。
→Background (背景・経過)
急ぎませんが、本日中に診察をお願いできませんか?
→Recommendation (依頼・要請)
わかりました。自宅にある抗生剤(○○㎎)と解熱剤(○○㎎1錠)を内服まで確認します。
→Confirm (口頭指示の復唱確認)
どんな場面においても、思いつきで報告することは良くありません。
大切なことは、何のためにその報告をしようとしているのか、何に困っているのかを明確にすることです。
自らの考えや依頼したいことを相手に伝えることは、最初は難しい。
けれど、しっかり順序立てて報告することで、診療がスムーズになります。
患者さまにとって、一番相談しやすい相手は看護師でありたい。
医療の目を持ち、医師の代わりとなって観察を行い、患者さまの変化を正確に医師に伝える「橋渡し」を上手にできる看護師になりたい!
在宅医療において、患者さまの容体に変化があった場合は、医師への報告を翌日まで待つことができるものなのか、緊急を要するものなのかを判断し、報告するタイミングを計らなくてはいけないのです。
タイミングを計るのは、簡単なことではありません。
そして医師に連絡をして、的確に状況を伝えることも難しいのです。
ここでもう一つ、医師への報告が上手にできるコツをご紹介します。
それは、「医師の性格、特徴を知ること!」
相手は、医師である前に一人の人間です。一人ひとり、みんな性格が異なります。
外来中、往診中など時間帯によっても対応が変わってくると思います。
医師ぞれぞれの性格や状況を配慮しつつ、「I-SBARC」を用いて報告が出来るといいのではないでしょうか?
緊急時には、誰でも気が動転するものです。
ベテラン看護師でも、どうすればいいのか?と慌てることも少なくありません。
そして緊急時には、看護師間の連携も必要です。
救急搬送を依頼する場合は、どのような基礎疾患がありどのように急変したのか、現在のバイタルサイン、意識レベルなど、的確に必要な情報だけ報告しましょう。
かわべクリニックでは、「医師に連絡する人」「患者家族に連絡する人」「訪問看護師に指示を出す人」「救急隊に連絡する人」で連携を行っています。
そして、何よりもスムーズに搬送してもらえるように、受け入れ先の病院の連携を大切にしています。
こちらは、かわべクリニックにおける「救急車要請カード」です。
これを用いて搬送を依頼しています。
在宅医療において重要なことは、日頃からの医師と情報共有をすることです。
報告の仕方によっては、緊急性がないととらえる医師もいるかもしれません。
だから医師への報告の際には、どの程度の緊急性なのかをはっきりと伝え、対応の指示が欲しいということを意識して伝達することが大切です
医師との連携をはかることは、看護師としては欠かせません。
しかし看護師は医師の指示の下で動くので、報告をするときも気を使います。
その際には、医師の性格や特徴を捉え、報告の仕方を工夫すること。
また的確な情報を簡潔に伝えられるようにすることが重要です。
スムーズな報告ができれば、医師との信頼関係にもつながると思います。
「I-SBARC」を、ぜひ意識してみてください。
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