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シャイな患者さまとのコミュニケーション克服術!

こんにちは!看護師の川邉綾香です。

コミュニケーションは人と人が繋がる上では必要なツールです。
でも、コミュニケーションは苦手…という方も多いと思います。

「コミュニケーションを円滑にするために…」といった本は沢山ありますが、実際の看護現場で病気を抱えた方=苦しみを抱えた方を目の前にした時に、教科書通りにはいきません。

では、看護現場での円滑なコミュニケーションとは、どのようなものなのでしょうか?

患者さま自身が思う本当の苦しみと、私たちが思っている患者さんの苦しみとは、決してイコールではありません。
そして、患者さまが私たちに聞いて欲しいと思っていることと、私たち医療スタッフが患者さまから聞きたいことは、一致しません。

「苦しみ」とは希望と現実の開きである。
何のための、誰のための確認なのか一度考えてみましょう。
きちんと考えてみると、シャイな患者さんとのコミュニケーションが楽しくなります!

ケーススタディ
ここで事例を一つご紹介します。
75歳男性。妻、長男との3人暮らし。
肺がん末期であり、通院が困難なため訪問診療が開始となりました。初回訪問の時から、丁寧な態度で接してくださるのですが、私たちとは目線を合わせず、人見知りをしている様子でした。
在宅医、クリニック看護師が週に3回訪問しましたが、毎回リセットされたかのように、人見知り感が見られました。
彼は訪問時、いつも緊張した面持ちで、私たちに何を聞かれるのか不安な様子を見せていらっしゃいました。
そして診察が終わり、雑談になると、徐々に口を開き、思い出話を軽快にお話くださいました。私は、彼の心境を考えてみました。彼は、がん末期ではあり、それをわかってはいるが受け止めとめたくない状況でした。
だから、息苦しさはあっても『息苦しい』と言ったら負けかの如く、苦しいとは言いませんでした。
苦しいと言ったら、酸素を付けないといけないかもしれない。
悪くなっているとは思いたくない。
それを私たち医療者に「息苦しくないか」と聞かれたくないのではないか、と思いました。

そんな彼の訪問時、私はある工夫をしてみました。
それは、訪問して15分間は、バイタルを測定する素振りを見せず、彼と妻と一緒に世間話を楽しむことでした。
すると彼の方から、「ちょっとずつ体調がましになっていると思う。さっきシャワーをしたけど、そんなに疲れなかった。もうちょっと体力ついたら嬉しいな」と、自ら体調の話をしてくださったのです。

その話をきっかけに、バイタル測定を行い、観察を行いました。
彼は、しんどくなることがわかっていたので、シャワーに入ることも拒み、清拭も自分ですると拒み、色々な提案を断っていました。
それらを自分で達成できたことを、本当は私たちに言いたくて仕方がなかったのだと思います。

私たちが一方的に「シャワーが出来たか?息が苦しくないのか?」などと聞きたいことを聞くのではなく、彼の意志を尊重したコミュニケーションが大切なのです。

また食事に関しても、妻から「お父さん、昨日唐揚げ食べたよ。でも、もう少しご飯食べてくれたら」との訴えがありました。
私は、「ん?ご飯は食べてられているのですよね?」とたずねたところ、妻から、「食べているよ。でもお父さんは白飯を食べないのよ。元々お酒が好きだったから、おつまみ、お酒のあてになるようなものは食べるけど、ご飯(白飯)を食べないからそれが困っていて」と。
数日前に看護記録にあった、妻の「ご飯を食べない。量も少ない」とはこの話だったのね、と気付きました。

私たちは、どうしても自分の物差しで物を見て、聞いてしまいがちです。
しかし色々な家庭があるように、「ご飯」という言葉一つにも色々な表現の仕方があります。
しっかりと相手の話を聞く姿勢や聞き方が重要なのです。

患者さまにとって、話し相手(医療者)が時計を見たり、落ち着きがなかったりすると焦り、伝えたいことを伝えられなくなってしまいます。
また、聞き手(医療者)も時間がなかったり、焦っていると、聞き方が浅くなり、誤解を生じる原因となリます。
そして、それが患者さまの新たなる苦しみを生じる可能性があるのです。

世間話から入って“前置き”を長くして、時間のゆとりを相手に感じさせることによって、安心感を与え、日頃引き出せない患者さまの顔を発見できることができます。
また会話を交わすことで、言葉の意味や真意についての発見に繋がる可能性があります。
このように、緩急つけた関わりもテクニックの一つなのです。

もちろん緊急の場合は、必要なことを確実に確認して、対応するコミュニケーション能力が問われます。
そのためには、緊急往診の依頼があった時も、現場に向かう車の中で何が起こっているのか、何が考えられるのか、現場で何ができるのかを考えながら向かう必要があリます。

看護は訪問前から始まっています。
今日の彼の気持ちはどんな感じかな?と想像しながら訪問すると、看護が楽しくなると思いませんか?

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