院内勉強会を行いました ~ヒドロモルフォン「ナルサス®錠」~
先日、第一三共の方をお招きし、かわべクリニックのスタッフ7名と日頃ご協力いただいている訪問看護師5名の合計12名で、ヒドロモルフォンについての勉強会を実施いたしました。
専門的な内容なのでご興味がない方もいらっしゃると思いますが、知識・情報の共有として記事にさせていただきます。
【9月:ヒドロモルフォン 「ナルサス®錠」「ナルラピド®錠」「ナルベイン®注」】
がんによる疼痛を緩和するために、「オピオイド鎮痛薬」が使用されています。
そのうちの一つは、一般にも知られている「モルヒネ」です。
現在はモルヒネ以外にも様々な薬剤が使用されるようになりましたが、「ヒドロモルフォン」は中等度から高度の痛みに対して使用する強オピオイドヒドです。
日本では長い間未承認薬でしたが、2017年6月に承認され、ヒドロモルフォンの経口薬として、持続痛に対して定期服用する徐放錠「ナルサス®錠」と臨時服用する即放性の「ナルラピド®錠」、注射剤の「ナルベイン®注」が販売されるようになりました。
鎮痛効果は従来のモルヒネやオキシコドンと大きな差がありませんが、腎機能障害時はモルヒネよりも安全に使用できるため、オピオイドスイッチ※の選択肢となり得る薬剤です。
※副作用で必要量を投与できない場合や鎮痛効果が不十分な場合に、他のオピオイドに変更すること
◆ナルサス®錠の特徴
(1)1日1回の服薬
ナルサス®錠は1日1回の服薬のため、介護者の服薬管理負担が軽減される、服薬コンプライアンスが低い患者様にも有用
24時間効果が持続するため、夜半過ぎから明け方に強くなる苦痛もうまくカバーしてくれる
(2)低用量で開始できる
ナルサス®錠の内服は2mg/日であり、これは経口オキシコドン6.6mg/日、経口トラマドール50mg/日に相当するなど、低用量である
(3)呼吸困難症状を緩和
これは私の印象ですが、ナルサス®錠は呼吸困難の症状を緩和しているように見受けられる
などがメリットとして挙げられます。
しかし、これも私の印象ですが、即放性の「ナルラピド®錠」は効果発現まで約20分程度かかり、アブストラル錠では10分程度なので、少し時間がかかるように思われます。
◆ナルベイン®注の特徴
皮下注射剤「ナルベイン®注」の同一部位への1日最大投与量は、20ml/日です。
(医療用麻薬 適正使用ガイダンス 平成29年4月)
では、実際に1日の投与量が20mlの場合に投与できる最大投与量として考えた場合、
モルヒネに換算 | ||||
塩酸モルヒネ注 | 1A | 200mg 5mL | 800mg | |
オキファスト注 | 1A | 50mg 5mL | 200mg | 140~170mg |
ナルベイン注 | 1A | 20mg 2mL | 200mg | 1600mg |
となります。
◆ヒドロモルフォン使用にあたり注意点
がん疼痛治療に大いに貢献するヒドロモルフォンですが、「ナルベイン®注」に関しては現在は在宅医療では使用が許可されていません。
その理由として、厚生労働大臣が定める「保険医が投薬することができる注射薬」(処方せんを交付することができる注射薬)の中に、「ナルベイン®注」が含まれていないからです。
また在宅療養指導管理料についても、「ナルベイン®注」は「在宅悪性腫瘍患者指導管理料」および「在宅悪性腫瘍患者共同指導管理料」の対象薬剤となっておりません。
つまり、在宅医療において「ナルベイン®注」を保険薬局から処方することができず、また患者様が病院から持ち込んだ場合は使用できますが、私たち在宅医が在宅療養指導管理料を算定することもできない、ということになっています。
今後、「ナルベイン®注」が在宅医療でも使用できるようになる日が来ることを願うばかりです。
がんによる疼痛を少しでも緩和するため、私たちは日々、新しい情報を取り入れる努力を重ねております。
オピオイド鎮痛薬について、またヒドロモルフォンについて、わからないこと、知りたいことがございましたら、ぜひお声がけください。
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