【看取りの報告書】Qさまのこと
クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。
今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。
退院日にお話をいただき、退院後に直接ご家族とご相談し、慌てて往診をしたQさま。
退院前カンファレンスの必要性とは…
[看取りの報告書]
退院支援課 A様
Q様についてご報告させていただきます。
退院2日後に初回訪問を設定していたのですが、退院翌日の夜に39℃の発熱を来し、往診依頼。それが初回訪問となりました。
胆管炎の再燃の可能性を説明した上で、自宅での療養を希望されたため、アセリオの点滴およびクラビットの内服治療を開始しました。
抗生剤が著効し発熱なく経過、またアセリオの点滴後にスッキリと腹部の痛みが緩和されたとの話もあり、アセトアミノフェンでの疼痛も図っていきました。
徐々に病状が進むにつれて、出来ていたことが出来なくなることへの苦しみを表出されたQさま。
医療用ベッドなどの導入を提案しましたが、「その環境こそが病人になった気持ちになる」と訴えられ、元々使用していた厚めのベッドマットの上に布団を敷いて、床から30㎝程段差をつけるなどの工夫をしました。
Qさまは最後まで『生への意欲』が強く、常に自分自身と闘っておられました。
それを支える奥さまも辛かったと思いますが、少しでもQさまが穏やかになれるようにと懸命に食事の工夫をされたり、家業であった自転車屋さんの状況をお伝えするなど、支えとなっておられました。
そして、退院から1ヶ月半後に、奥様、近所に住んでおられるご長男さまとそのご家族、そして次男さまに見守られ永眠されました。
亡くなられる前日にベッド上で洗髪をした際に、Qさまより「あぁ~気持ちいい~。どっち行ったらいい?生きる方?死ぬ方?」と言われて驚いていたところ、奥さまが優しい声で「まだこっちいてて。」と言われ、Qさまが穏やかな表情になったことを思い出されます。
ご紹介ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。
[ケアを振り返って]
患者さまの心理として、「在宅訪問診療って何?」「まだ、動けるのに急変時に備えて往診の先生を決めておくってどういうこと?」「ガンではあるけど、今は食事も食べられているし、そんなにすぐに悪くなるとは説明受けていないから大丈夫。」といった心境だと思います。
そんな中で病気と上手に付き合うために、かかりつけ医(在宅医)がいかに重要であるかを早期にご説明する必要があります。
ただ、どの患者さまも「今は治療中だ、そのような話はまだ先の事だ」と思うかもしれません。
しかし、「早いに越したことはない」と思っていただけるようなシステム作りが必要だと、強く思います。
では、どうするべきでしょうか?
かわべクリニックでは積極的に退院前カンファレンスに参加し、病院医と在宅医、患者さま・ご家族さまと、皆のが顔の見える関係を築くこと、その上で安心して在宅療養ができるように心がけております。
※退院前カンファレンスに参加する上で心がけていることについては、前回のブログでご紹介しております。ぜひご一読ください。
在宅でも安心して過ごせる、対応してくれる・支えくれる人が増えた、とご本人やご家族が思えたときに、患者さまの「最期まで自宅で過ごしたい」という希望が叶うのだと思います。
その支えの中で『選ぶことのできる自由』がある。
寝床や食べたい物、したいことが選べたときに、穏やかな気持ちになるのではないでしょうか。
医療資源や社会資源、公共資源など色々な情報を提供する必要は、もちろんあります。
ただ、それらが患者さま本人にとって「穏やか」と思えるものなのか、考えていく必要があると常々感じています。
[ご家族さまからの手紙]
Qさまの奥さまよりお手紙をいただきましたので、ご紹介させていただきます。
日暮れが日々早くなって参りました。
先生はじめ皆様には不安な日々を支えて頂きまして本当に感謝しております。
主人も同じ気持ちでいたと思っております。
心に穴があくというか、もっと長生きして欲しかったという思いは尽きませんが、安らかに旅立てましたことを家族の慰めにしております。
職人気質で根は優しい、仕事が好きで、釣りが好きで、ドライブが好きな主人でした。
一緒に過ごしたかけがえのない日々の思い出を胸に生きてゆこうと思っております。
本当にありがとうございました。
※プライバシーに配慮し、お名前はアルファベットとさせていただきました。
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