在宅医療の未来を創る訪問看護師~研修レポートより~
かわべクリニックでは、在宅医療に興味を持つ医療者の方々の見学・研修を行なっております。
先日は、「在宅訪問診療を中心とした看護に取り組みたい」と希望をお持ちの、東大阪市に拠点を構える訪問看護ステーションの看護師(看護歴1年)が2か月間、当クリニックにて研修を受けられました。
この研修では、以下の3点を中心にお伝えしました。
・看護師が主体となった医療ケア
・特に病状の変化が多いがんの終末期医療の場面では、看護師が主体的に判断して医師と意見を交換し、ケアをリードする大切さ
・看護師が受け身にならずにアセスメント、プランを行ない、患者さま一人ひとりにとってよりよい「最期」を迎えられるようなきめ細かいケア
2か月間の研修を終えて、振り返りを作成いただいたので、ご紹介させていただきます。
かわべクリニック研修を終えて
(1)研修前後の看護に対する思いの変化
研修前は、一人で訪問する事に「怖さ」がなかった。
しかし研修を終えて、「看護師の仕事は怖い」と実感した。
以前は、「その日できなかったことはまた次の日にできたらいい」という気持ちがあったが、かわべクリニックでがん患者さまと接したときに「この患者さまに次はないかもしれない」ということに気づき、「一期一会」の気持ちで訪問しないといけないと思った。
(2)得られたこと
毎日の研修で、その日見たこと、聞いたこと、感じたこと、学んだことを振り返る大切を知ることができた。
「何がわかっていて、何がわからないのか」という根本的な部分の振り分けができるようになった。
また、次に訪問する看護師のために私が知り得た患者の情報を正確に申し送る(記録方法)ことを学んだ。
訪問前に、患者の問題点の抽出を行い、根拠をもって観察することができた。
(3)現場で実践していきたいこと、していること(実践してみて相手からの反応はどうだったか、自分はどう感じたか)
誠実さをもって患者さまに接していくこと。
できなかったことをそのままにしておくのではなく、振り返り学習し習得していくこと。
前回の訪問時にできなかったことをしっかりと振り返ることで、次に生かすことができた。
その結果、患者さまの在宅に至るまでの経緯を知ることで距離が縮まり、症状の経過や前の記録から問題点を抽出することができた。
また抽出した問題点をしっかり持って訪問することで、患者さまとの会話(問題点に沿った内容)ができるようになったため、患者さまの表情、しぐさなどに変化が現れた。
(4)看護の難しさ
初回訪問の介入の難しさ。個別性に沿った看護。
信頼関係の構築を含め、患者さまの全体像をみること。
(5)今後の課題
新人の在宅看護師を増やすには、受け入れる職場と研修できる場所が必須だと思われる。
また、働きたいとおもっているが「怖い」と感じている新人看護師の、恐怖心を取り除くことできるような環境調整が必要ではないか。
(6)今後の取り組み
研修で、学習方法や振り返る習慣、正確に患者の状態を送る記録の書き方などを学べたので、ステーションに戻っても続けていきたい。
また、訪問看護師の良さを伝えていくためにはどうような行動が必要か考えていきたい。
(7)研修検討中の方へのメッセージ、おすすめポイント
訪問看護師を目指す新人が「在宅看護をしたい」と思う反面、知識や経験がないとやめてしまう人が多いと思います。実際、一人で訪問して何かあったときに、何もできないもどかしさと同時に怖さを感じたことが私にもあります。
この研修を終え、今まで以上に「看護は怖い」と実感もしました。
今回、かわべクリニックで研修をさせていただき、自分自身が「何がわかっていて、何がわかっていないのか」を知ることができました。
毎日、足りないところを指導していただけるので、復習や予習をすることができました。
また、PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)で聞きたいことをタイムリーに質問でき、疑問に思っていることをすぐに解決できます。足りない情報は、資料の提供により具体的に指導していただけます。
何より、週単位で自分に合った研修プログラムを考えてくださるため、多くの学びを得ることもできます。
かわべクリニックではたくさんの症例があるため、訪問看護ステーションでは学べないことや、手技に限らないたくさんの経験をすることができました。
看護学生のときのように、予習やレポートは大変でした。どんな予習が実践で役に立つか分からず、夜更かしすることもありました。
しかし、勉強は無駄になりません。また、振り返りレポートを指導いただくことで自分の力になりました。
研修後、ステーションに戻っても振り返る習慣が残ります。研修を受け入れていただけるクリニックは少ないため、経験や知識を習得したい方にはおすすめです。
(8)問題点
はじめは慣れない環境下で、緊張で聞きたいことや質問等何をすればいいのか分からず、頭が真っ白になる日が多かったです。
もっと積極的に行動できれば良かったと思っていますが、研修のプログラムや行動手順があればスムーズにできるのではないかと感じました。
一例として、患者情報をとる時間が少ないと感じました。往診や訪問前に観察項目のおさらいがあれば、訪問中にみる視点や学びの幅が増えるのではないかと思いました。
カルテに観察項目の記載はありますが、何故その観察項目なのか、根拠を予習することができればよかったと思いました。
自分自身で考えることが学びですが、看護経験や知識がないため、訪問前に調べるには時間が少なかったです。(服用している薬に関しても調べていたため)。
(9)訪問看護ステーション・管理者から
お忙しい中、2か月の研修ありがとうございました。
在宅訪問看護における新人指導をどのように行えばよいか分からず、同行し注意点を指導するのみとなっておりました。
しかし、かわべクリニックで経験をさせていただき、ステーションでは学べないたくさんの事を学習できた研修だと思います。
一番学んでほしかった「怖い」という気持ちをはじめ、アセスメントやわからないことを聞く姿勢など、成長を感じました。
私自身も、質問されたときの根拠やアセスメントをしっかり考え指導していく大切さを学ぶことができました。
この研修を通して学習することの大切さ、スタッフ全体での学びを深めていくことの大切さを感じました。
まとめの言葉(看護師 川邉綾香)
在宅医療は特殊です。
なぜなら、患者さまのご自宅で個別性を重んじた医療・ケアを行うからです。
私たちが行う研修目的の第一は、相互理解です。
研修には、病院やMSW(医療ソーシャルワーカー)、訪問看護師など様々な視点を持つ方にご参加いただいております。
その中で、各自の看護観や考えを尊重しながら、『最期まで自宅で』という患者さまの思いを支えるために、かわべクリニックではどのような視点で、どのような看護・医療を行っているのかを学んでいただければ、と考えております。
もちろん、看護師経験の少ない方、在宅訪問の経験のない方にとっては、覚えることや考えること、学習することなど多いかと思いますが、基本的にはお互いの看護を高め合うことを目的としています。
また、見学・研修をしてもらうことで、かわべクリニックの医療が誇れるものであるのかを見直す機会でもあり、かわべクリニックにとってもよい刺激となります。
そして医療者だけでなく、患者さまに関わるすべての方に、かわべクリニックがどのような考え医療を行っているのかを、知っていただける場でもあります。
私たち医療者は、患者さまを中心としたオープンでフラットな関係、そして真の連携が築くことができると考えています。
ご興味のある方はいつでもご連絡ください。
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