なぜあなたの看護記録は伝わらないのか?
看護師・川邉綾香が分析する「5つの理由」
~続・看護記録作成が苦手!という方へ~
こんにちは。看護師の川邉綾香です。
前回の記事に続き、看護記録作成のポイントについてお話させていただきます。
看護記録を一生懸命書いているつもりなのに、医師や他の看護師に内容が正しく伝わらない! とお悩みの方はいらっしゃいませんか?
なぜ、あなたの看護記録は他の人に伝わらないのでしょうか。
その理由として以下の5つが挙げられます。
① 患者さまから聞いた話を、聞いた順に書いている。
② 見たままのことだけを記録している。
③ ①②をメモした順に書いているため、アセスメント(A)・プラン(P)に合わない。
④ そもそも、アセスメント(A)・プラン(P)がない!?
⑤ 最終的に何が問題なのか記録を読んでも明確にならない。
「見たまま」とは、訪問した時の患者さまの状態そのものを、ただ単に並べて書いているような内容のことです。
そのような記録をみていると、「前日と比べてどうなの?」「この後何が起きそうなの?」という疑問が残ることが多々あります。
看護記録として決して間違ってはいないのですが、継続的治療において、前回と比較できるよう経時的な視点での記録が重要となります。
また読み手(次に訪問する看護師や在宅医)は、その患者さまの問題点を想像しながら看護記録を読みます。
その際、問題点が順序立てて書かれていなければ、とても読みにくくなります。
・前日と比べてどうか
・患者様の状態が良くなっているのか、悪くなっているのか
・状態は横ばいなのか
・夜にかけて状態がどうなりそうか
などの変化を明確に書くことで、家族への関わり方やケアにも役立てることができます。
また、その記録を読んだ医師もスムーズに対応できます。
ケーススタディ
ここで、事例を通して具体的に考えてみましょう
・患者:85歳 男性 無職
・職業:無職
・家族構成:一人暮らし。子どもは遠方。
・疾患名:肝細胞癌、膀胱癌
・ADL:室内のADLは自立
・経過:肝細胞癌で治療中に膀胱癌と診断され、膀胱全摘術を施行。入院期間が10日。右側腹部に腎瘻が造設されウロストミーを装着して退院後、訪問看護を再開。
・退院して5日目の訪問時の記録。
前回の記事でお伝えしましたが、訪問前からSOAPの準備は始まっています!
訪問前に、問題点を考えてから訪問しましょう。そして、その問題点の順に看護記録を書くだけで全く中身が違ってきます。
では、先ほどの症例に戻ってみましょう。
問題点が明確になっていないパターン(1)、問題点が明確なパターン(2)を比較してみます。
<パターン(1)>
問題点が明確になっていないため、何が問題か、どう対処すべきかわからない!
[チェック]
※尿バックの管理ができていることは記載されている。
※ストマのトラブルがないか、本人は不安を感じていることが記載されている。
[チェック]
※「○○ありと」という伝聞表現が多い。「あり」と言われたのであればそれはSに記載すべき。
※「疼痛なし」もSに記載すべき
→OにSが混在している。
「※ストマ周辺に発赤あり」とはどの程度で、次に継続評価をするためにはどうするのか?
[チェック]
※Aの記載がない。何を問題として、どのように対処するのか?
※今後、どういうことが考えられるため、どのような説明を家族や本人にしたのか?
<パターン(2)>
問題点が明確になっているため、具体的な対応が考えられる!
[チェック]
※退院後、尿バッグを付けた生活を安全に送るために、環境調整などの生活の工夫や、困っている点・不安に感じていることが患者さまの言葉として表現されている。
※食事、尿量など基本的な情報が記載されている。
[チェック]
※ストマ管理における観察項目が順序立てて記載されており、次回評価する際も同様の順で観察できるような記載になっている。
[チェック]
※腎瘻造設後の問題点として、腎瘻管理不足による腎盂腎炎を起こす恐れがある。その問題点に対しての評価が記載されている。
※ストマトラブルに関しては、病院での処置を継続することで対応する旨が記載されており、問題が生じた際の対処方法まで記載されている。
※退院後の生活に支障があるかどうかはSとOに記載されている。その上で、患者様が困っている点において具体的な援助内容が記載されている。
看護記録は、その患者さまの全てであり、看護師の思考過程と看護行為を表す重要なものです。
そして、自らの看護を評価し成果を確認していくために欠かせないものです。
考えながら書く訓練をすることで、看護行為の根拠がより確かなものになります。
患者さまのためにも、読みやすく、全てを網羅した看護記録が重要です。自信を持ってどんどん書いていきましょう!
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