【看取りの報告書】Kさまのこと
クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。
今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。
一人暮らしだったKさま。
ガンが骨に転移し歩くことができなくなったとき、娘さまは同居を決意なさいました。
自宅に帰りたいという思いや、娘さまに迷惑をかけたくないという気持ちで迷うKさまでしたが、娘さまの「お父さん、一緒に暮らそう」の言葉で、最期のときを家族みんなで、穏やかに過ごすことができました。
[看取りの報告書]
退院支援課 皆様
Kさまについて、ご報告させていただきます。
高齢の独り暮らしであったKさまの在宅診療についてご紹介いただいたのは、秋のことでした。
介入当初、几帳面なKさまはお薬も自己管理されており、私たちは見守り医療を中心に行っていきました。
しかし、突如痛みが出現。救急搬送を余儀なくされ、再び入院なさいました。
そして、骨転移との診断を受けたKさま。
疼痛コントロールを図ったものの臥床状態になったため、娘さまは同居を決意なさいました。
クリニックに「退院後、転居しても往診してもらうことは可能ですか?」とお電話をいただいたことで、遠方にはなりますが、再びお引き受けすることとなりました。
春に退院したKさま。
日当たりのいいお部屋で野球や相撲などテレビ鑑賞し、穏やかな時間が流れていました。
歩行時の痛みがあるためベッド上での排泄を余儀なくされましたが、お孫さま(娘さまの息子さま)が看護学生であったため、Kさまの排泄介助や清拭など、献身的に介護のサポートをしてくださいました。
娘さまは、介護や看取りに対して不安もおありでしたが、週3回の訪問看護の介入や緩和ケア病院の見学もされ、徐々に受け入れていらっしゃいました。
Kさまは亡くなられる1週間前まで、大好きだったお風呂(訪問入浴)を楽しまれ、2日前までにゅう麺を食べられるなど、落ち着いた時間を過ごされていました。
そして最期は眠るように、ご家族さまに囲まれるなか、安らかに永眠されました。
死後の処置には、娘さまも参加されました。
Kさまの思い入れのあるスーツに蝶ネクタイを着ていただき、紳士的であったKさまらしい、素敵な最期のお姿でした。
このたびは、ご紹介ありがとうございました。
今後もよろしくお願い致します。
[ケアを振り返って]
ご家族は、一人暮らしをされているKさまが穏やかに過ごせているか、いつも気にしていらっしゃいました。
しかし、頻回に様子を見に行くことの出来ない環境の中、我慢強いKさまは体調不良を感じてもなかなか受診をしようとされず、結果的に誤嚥性肺炎となって入退院を繰り返し、その度に体力の低下が認められました。
このような状況の中、在宅診療について知ったご家族さまからのご依頼で、訪問させていただくことになりました。
Kさまは、「自分でできる、体調が悪くなったら受診したらいい」という気持ちが強く、介入当初は「大丈夫です」とばかりおっしゃっていました。
それでも、やがて時を重ねるうちに信頼関係を築くことができ、Kさまに「安心」を提供できるようになりました。
ご家族にとっても、私たち在宅スタッフが「ご家族の目」となって見守ることでで、安心感を持っていただけるようになりました。
再入院後、娘さまの家に行くことになったKさまは、妻と過ごした自宅に戻りたいという気持ちと、娘さまに迷惑をかけて申し訳ないという気持ちと、それでも家族と過ごしたいという気持ちとで、とても迷われました。
そして、最期のときを娘さまと暮らすことを選択されました。
ご家族と過ごすKさまの表情は、一人暮らしをされていたとき以上にとても穏やかで、どこか安心した面持ちでした。
やはり、家族の力にはかなわない。そう思わされました。
[ご家族さまからの手紙]
年が明けてから、娘さまよりお葉書をいただきましたので、ご紹介させていただきます。
「昨年中は大変お世話になり。ありがとうございました。
なんの不安もなく父の介護が出来たのも皆様のおかげです。
もっと早くお礼を言わなければいけないのに申し訳ありません。
やっと昨年の12月に、実家の片付けなどすべて終わりました。
淋しくなりましたが、思い出すのは楽しく笑っていた父の顔です。
本当にありがとうございました。
皆様にはお風邪などひかれませんように。」
※プライバシーに配慮し、お名前はアルファベットとさせていただきました。
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