【看取りの報告書】Fさまのこと
クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」をとしてまとめています。
今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。
【看取りの報告書 バックナンバー】
・Eさまのこと
・Dさまのこと
・Cさまのこと
・Bさまのこと
・Aさまのこと
肝細胞癌だったFさま。「薬に頼りたくない」と毎日1万歩を歩き、温泉に行き、苦しみを言葉にして死を受容し、最期まで自由に、自分の思う通りに人生を全うなさいました。
[看取りの報告書]
病院からFさまをご紹介がいただいたのは、ある冬のことでした。
初めてお会いしたときにFさまが「毎日1万歩を歩くことが目標なので、そのために体調を整えてください。温泉にも行きたいので止めないでください」とおっしゃったことが、とても印象的でした。
そこから週に4回、当クリニック医師と看護師が交代で訪問。
毎回1~1.5時間の訪問の中で、Fさまが病気と向き合う姿勢や人生観、死生観、家族への思いなどをお聞きしながら、疼痛コントロールを始め症状緩和に努めました。
翌月に入り、食欲低下、体力低下が見られたものの、念願の温泉にも行くことができました。
さすがに疲労感が強かったのか、ご帰宅後は自宅でゆっくりと過ごされていました。
温泉から戻った3日後のこと。午前に診察にうかがい、夕方から自宅のお風呂に入ったところ、入浴中に心肺停止。
発見された時はご家族さまの動揺もありましたが、気持ちよさそうで穏やかなFさまのお顔を見て、「最後の最後まで自由な人で、自分の思う通りに逝ったね」とお話しされていました。
そしてご家族全員に見守られる中、安らかに永眠されました。
奥様より、「本人はもちろんのこと、家族も心の緩和ケアをしてもらえました」との嬉しいお言葉をいただきました。
[ケアを振り返って]
私たちは、Fさまから多くのことを教えていただきました。
Fさまは、ご自身の苦しみを言葉にして、私たちに伝えてくださいました。
Fさまの苦しみは、他の多くの患者さまの苦しみでもあります。
ご自身の苦しみを伝えられない患者さまも多くいらっしゃる中、私たちはFさまの言葉を通して、多くの患者さまの苦しみ、痛みについて思いを馳せることができました。
Fさまの言葉を、一部ご紹介させていただきます。
死の受容は、簡単なものではありません。
Fさまにとって「この苦しみをわかってくれる人」に、私たちはなれたのではないかと思います。
ただ、Fさまの「解決のできない苦しみ」を聞くことは、Fさまを支えたいと思う医療者にとっても苦しみでした。
その苦しみをクリニックスタッフと共有することで、また、私たちも前に進める。
『誰かの支えになろうとする人こそ、一番支えを必要としている』のですから。
[ご家族さまからの手紙]
娘さまより、お葉書をいただきましたので、一部をご紹介させていただきます。
「父が家族の胸に良き面影と楽しい思い出を残し、実り多き生涯に幕を下ろしました。
父は、皆様方と出逢えて長年にわたり楽しい時間を過ごさせていただき、多くの思い出と共に旅立つことができました。
心より深く感謝申し上げます。
きっと故人もいまごろは、あなたさまの優しいお心に喜んでいることと思います。
なお、今後とも私ども遺族に故人存命中と変わりないご厚情を賜りますよう、なにとぞよろしくお願い致します。」
※プライバシーに配慮し、お名前はアルファベットとさせていただきました。
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