【看取りの報告書】Dさまのこと
かわべクリニックでは、患者さまが病院を退院後、最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」をとしてまとめ、病院看護師にお送りしています。
今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。
【看取りの報告書 バックナンバー】
・Cさまのこと
・Bさまのこと
・Aさまのこと
[看取りの報告書]
退院支援課 S様
いつもお世話になっております。Dさまについて、ご報告させていただきます。
まだ60代後半とお若かかったDさま。Dさまのお宅に初回訪問した際に腹満を訴えておられていましたが、トイレを失敗したくないという想いから利尿剤を内服していないとのこと。膀胱留置カテーテルを挿入することでトイレの失敗はなくなることをご説明し、挿入したあとは安心した表情となりました。その後は利尿剤を増量して、腹水コントロールを図っていきました。
ご自宅のお風呂に入り、体力が低下するなか「リハビリもしたい」と意欲的に過ごされていました。しかし、徐々にADL※が低下。亡くなられる1週間前の訪問した際には、がんで亡くされた奥様への思い、息子や嫁に対する感謝の言葉を、倦怠感が強い中、1時間以上も話をしてくださり、とても貴重な時間を過ごさせていただきました。
その数日後より意識レベルが低下し、最期は眠るように、ご家族に囲まれ安らかに永眠されました。お嫁様は、「お義父さんにはよくしてもらったので、最期まで看てあげたい」と最期まで献身的な介護をしてくださいました。
ご家族のみなさまには、感謝しきれない気持ちでいっぱいです。
かわべクリニック 看護師 川邉 綾香
※ADL:「Activity of Daily Living」の略で、食事やトイレ、入浴など日常生活の中での習慣的行動のこと。
[ケアを振り返って]
亡くなる1週間前の訪問の際、Dさまは私たちにいろいろなお話をしてくださいました。Dさまが働いていたお店の娘さんと結婚したこと。奥様は40代で乳がんになり、数年後に肺転移が見つかりましたが最期まで治療を諦めず、奇跡的に数年間頑張り50代で亡くなったこと。「妻は夫を転がすのが上手な人だった。いい女性に巡り会えたと思っている。」とおっしゃいました。
息子さまに対してはどんなお父様だったのですか?とおたずねすると、リビングに飾ってある写真を見ながら、「息子には厳しかったかな。よく手をあげたしね。よい嫁さんもらって本当に感謝している。子供には店は継がさないと思っていたので、これを機に閉めることにした。」と。
そしてDさまは、「いろいろ苦労はあるけれど、自分が幸せになるために自分が何を努力して、我慢しないといけないか、それを早く気付くことが大事だと僕は思っている。今はかわべクリニックに任せているが、先生が何かを出来るわけじゃない。自分がどうなりたいかと自分自身が考えることだから。色々あると思うけどよろしくお願いします。」とおっしゃいました。
その言葉に、Dさまの強さと優しさを感じ、胸が熱くなりました。
最期の診察である死亡診断をした後、Dさまからうかがった息子さまとお嫁さまへの感謝のお気持ちをお伝えしたところ、「父からそのような言葉が聞けるとは思っていなかった。すごく嬉しい。」とおっしゃっていただきました。
わたしたちが家族の絆を強める支えになれたような、そんな気がした瞬間でした。
[ご家族さまからの手紙]
お嫁さまよりお葉書をいただきましたので、一部をご紹介させていただきます。
「無事に初盆の法要も終わりました。とても早く感じます。
少しずつ落ち着いた日々を送っています。
かわべクリニックさんには、大変お世話になりました。
訪問で来ていただけてとても助かりました。
わからない時、不安な時、いつでも電話させてもらえたのが私も義父さんも、とても心強かったです。
義父さんも訪問時にいろんなお話ができ、とても楽しかったようで、私が帰ってきたら聞かせてくれました。
訪問の日を楽しみにしていたと思います。もう少し楽しみたかったと思っているはずです。(笑)
家族一同、自宅で看取れた事、本当に良かったなぁと思っています。
本当にかわべクリニックさんと出会えて良かったです。
感謝しかありません。本当に 本当に ありがとうございました。」
※プライバシーに配慮し、お名前はアルファベットとさせていただきました。
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